

木本圭子|velvet order 柔らかい秩序 2025
このたびTHE POOLでは、2025年4月1日(火)から4月12日(土)まで、木本圭子(きもと・けいこ)の個展「velvet order 柔らかい秩序 2025」を開催いたします。本展タイトルは、作家が2015年に行った「velvet order」で見いだした“柔らかい秩序”を、新たなステージへと展開する試みです。
木本はテキスタイルを学んだ後、1986年にアップルのMacintoshと出会い、コンピュータと数理的手法を用いた独自の表現を開始しました。1990年代にはプログラミング言語を取り入れ、動的な映像表現を探求しました。2000年初頭には、非線形力学系の数式を反復演算して生まれる曲線や螺旋を白と黒のみで構成した《Imaginary・Numbers》を発表し、その有機的なフォルムとミニマルな佇まいで注目を集めます。
2006年には文化庁メディア芸術祭アート部門で大賞を受賞し、非線形科学の研究プロジェクトにも参加するなど高い評価を得ています。一方、身体性や触覚を重視する姿勢から、クリスタルガラスや布、和紙など多様な素材への出力を試みるなど、デジタルとアナログを横断した表現を展開してきました。近年では広島へ拠点を移し、墨絵や日本画材料による作品へも取り組んでいます。
木本は、宇宙や自然を成り立たせるルールを数学をつうじて探究することを、大きな世界への思考の広がりと捉えます。プログラムによって粒子を流す“場”をつくり、非線形の柔軟な構造を可視化する行為は、大自然が持つ微細な秩序を見つめる試みであり、「川の流れを作ること」に例えられます。
ロジックと感性が融合する制作へと結びついた背景には、狭い“自我”に陥らず、不可視の環境そのものを見据えたいという思いがありました。こうして生まれた「柔らかい秩序」は、人間が砂粒のひとつにすぎない雄大な座標系に身を置くことで見えてくる、宇宙や生命の多層的なリズムを体感させてくれます。
本展では、長年のデジタル制作を経て身体性や触覚を新たなかたちで取り込む木本の新作・近作を公開し、広大な時間の中で“柔らかい秩序”が生み出す多彩な様相をご覧いただけます。広島で初となるこの機会を、ぜひお見逃しなくご高覧ください。
※非線形性=物事が直線的に進むのではなく、多様な曲線をベースに変化していく仕組み
GEIJYUTSU TOKKO -芸術特講- vo.2 「柔らかい秩序」について
開催日時|2025年4月6日(日)17:30〜19:30
会場|広島大学東千田キャンパス 地域連携フロアSENDA LAB
〒730-0053 広島県広島市中区東千田町1丁目1−89 総合校舎L 棟5階
※当日はギャラリー休廊日につき、下記時間のみ展示をご覧いただけます。
14時〜17時、トーク後 20時〜21時まで
【登壇者】
木本圭子(アーティスト)
四方幸子(キュレーター、批評家/美術評論家連盟会長)
香村ひとみ(キュレーター、THE POOL主宰)企画 / モデレーター
申込|一般¥1,000 学生¥500(税込)※要予約、定員に達し次第〆切
info@the-pool.info までご連絡ください。

木本圭子 KIMOTO Keiko
広島生まれ、現在広島在住。
1980年代後半より独学で数理造形に着手し、2000年頃から動的表現の制作・研究へ展開。
2003年発表の作品集『イマジナリー・ナンバーズ』を皮切りに、精緻な平面作品も手がけ、東京都現代美術館やミラノサローネなど国内外で発表している。
主な展覧会
1995 木本圭子展(INAXギャラリー/東京)
2003 木本圭子個展 時の触覚 (ASK? gallery/東京)
2004 文化の周縁=交差点で/トリックスターとしての詩人(札幌大学文化学研究所/北海道)
weaving imagination #0 想像力を織り込む表現(ASK? gallery/東京)
“Imaginary Numbers : Keiko Kimoto solo Exhibition”(MIKA GALLERY/ニューヨーク)
ミッションフロンティア–知覚の宇宙(そら)へ(東京都写真美術館/東京)
2005 White Noise Exhibition(ACMI / オーストラリア)
超(メタ)ビジュアル-映像•知覚の未来学(東京都写真美術館/東京)
超(メタ)ビジュアル巡回展(アンギャンレバンアートセンター/フランス)
WRITING line , LIGHTING Line(川崎市民ミュージアム/東京)
2006 TOYOTA LEXUS Exhibition(ミラノサローネ/イタリア)
ポストデジグラフィ(東京都写真美術館/東京)
2007 第10回文化庁メディア芸術祭、受賞作品展(東京都写真美術館/東京)
ユビキタス•メディア—アジアからのパラダイム創成(東京大学工学部2号館展示室/東京)
文化庁メディア芸術祭 上海展2007(上海都市彫刻芸術センター/中国)
2008 オープンスペース(NTTインターコミュニケーションセンター・ ICC /東京)
大垣ビエンナーレ(情報科学芸術大学院大学・IAMAS/岐阜)
文化庁メディア芸術祭 シンガポール展 2008(シンガポール美術館新設棟/マレーシア)
シーグラフアジア 2008 in シンガポール(シンガポールサンテックコンベンションセンター/マレーシア)
2010 ERI MATSUI 2010 AW COLLECTION 東京コレクション(Billboard Live TOKYO/東京)
2011 木本圭子個展–dimension rendez-vous(ASK? gallery/東京)
感じる文学(佐世保市博物館島瀬美術センター/長崎)
2012 MEDIA GEIJUTSU – Flow & Bright (GYRE/東京)
2013 文学×Media Art展(高知県立文学館/高知)
2014 文化庁メディア芸術祭愛知展(愛・地球博記念公園/愛知県)
ミッション「[宇宙×芸術]コスモロジーを超えて」(東京都現代美術館/東京)
2015 velvet order(ベルベットオーダー/柔らかい秩序)(古美術祥雲/東京)
2016 文化庁メディア芸術祭広島展(旧日本銀行広島支店/広島)
KENPOKU ART 2016(茨城県北芸術祭/茨城)
文化庁メディア芸術祭20周年企画展—変える力(アーツ千代田 3331/東京)
2017 国際科学映像祭ドームフェスタ(キャラクシティ/東京)
SEEDS CONFERENCE 2017(三渓園/横浜)
2018 BENIZAKURA PARK ART Annual2018(紅櫻公園アートAnnual)(紅櫻公園 /札幌)
2021 文化庁メディア芸術祭京都展 科学者の見つけた詩(京都文化博物館別館ホール/京都)
第13回恵比寿映像祭-映像の気持ち(東京都写真美術館/東京)
2022 イメージ•メイキングを分解する(東京都写真美術館/東京)
AIRWARE 木本圭子 紹介ページ